🥢「ユッケはもう生肉じゃない?」——タレが主役の進化系ユッケ論

🥢「ユッケはもう生肉じゃない?」——タレが主役の進化系ユッケ論

ユッケと聞いて、多くの人がまず連想するのは「生牛肉」。しかし近年、そのイメージは静かに変わり始めている。かつて“生肉の象徴”だったユッケは、いまや「味付けスタイル」としての存在感を強めつつあるのだ。

規制が変えたユッケの定義

2011年に起きた集団食中毒事件をきっかけに、日本では生牛肉の提供が厳しく制限された。多くの焼肉店からユッケが姿を消し、一時は“幻の料理”とも呼ばれたほどだ。だが食文化はしぶとい。料理人たちは「生肉が出せないなら、別の素材で“ユッケの味わい”を再現しよう」と考え始めた。

馬肉・魚介・野菜まで「ユッケ化」

今では馬肉ユッケが定番になり、マグロやサーモンを使った海鮮ユッケも人気を集めている。さらには豆腐、アボカド、キノコといったヘルシー食材までが「ユッケ風」にアレンジされ、居酒屋や韓国料理店の定番メニューに。共通しているのは、生かどうかではなく「甘辛いタレ+ゴマ油+卵黄」という組み合わせだ。つまり、ユッケは素材に縛られず、味付けのスタイルそのものを指す言葉へと変化したのである。

「生肉」から「ユッケらしさ」へ

この変化は、寿司が世界中でアレンジされ、カリフォルニアロールのような新しい形を生んだ流れにも似ている。食文化は固定された定義を超え、人々の創意と嗜好によって広がっていく。ユッケもまた、牛肉にこだわらない「自由な器」になったといえるだろう。

いまや「ユッケ=生肉」ではなく、「ユッケ=ユッケらしい味付け」。その発想の転換が、料理の可能性を大きく広げている。もしかしたら数年後には、デザートユッケやヴィーガンユッケが当たり前になっているかもしれない。

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